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企業におけるストレスマネジメント:実践方法や効果を紹介
目次
企業におけるストレスマネジメント:実践方法や効果を紹介
現代のビジネス環境において、ストレスマネジメントは組織にとって避けて通れない課題の一つとなっています。
従業員が抱えるストレスを適切に管理することは、その健康はもとより、企業のパフォーマンス向上にも直結します。
本コラムでは、企業におけるストレスマネジメントの重要性とその実践方法、効果について具体的に掘り下げていきます。
ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、ストレスを効果的に管理し、軽減するための方法や考え方のことを指します。
ストレスは日常生活や仕事の中で避けられない要素ですが、適切に対処することで心身の健康を保つことができます。
ストレスマネジメントは、個々の状況や性格に応じて異なるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。
ストレスとは
効果的なストレスマネジメントを行う上で重要となるストレッサーと、それに対するストレス反応について解説します。
■ストレスの原因となる「ストレッサー」
ストレッサーとは、ストレスそのものを引き起こす原因のことです。
人間関係でいえばハラスメント行為や、理不尽に高い顧客からの要求、評価における達成困難な目標などです。物理的な環境ですと、騒音、不衛生、不快な温度/湿度などをさします。
■ストレスによって生じる「ストレス反応」
人間は、こうしたストレッシャーにさらされるとストレス反応を起こします。個人差はありますが、概ね以下のようなストレス反応を示します。
①身体的なストレス反応
頭痛、腹痛、倦怠感、眠気、不眠、過眠、食欲不振 など
②心理的なストレス反応
集中力の乱れ、イライラ、不安、落ち込み、記憶力の低下、怒りっぽい、やる気が出ない など
③行動面のストレス反応
過度の飲酒、喫煙量の増加、性欲の減退、周囲に攻撃的になる、勤怠の乱れ、過食、不食 など
個人におけるストレスマネジメント方法
ストレスマネジメントとは、ストレスを効果的に管理し、軽減するための方法や考え方のことを指します。
ストレスは日常生活や仕事の中で避けられない要素ですが、適切に対処することで心身の健康を保つことができます。
有効なストレスマネジメントは、個々の状況や性格に応じて異なるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。ストレスマネジメントには以下のような方法があります。
■セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、自身の心理・身体的な状態を自己観察し、状態を把握することです。
自身の状態に気づくことで客観性が生まれ、置かれた状況に冷静に対処することが可能となります。
セルフモニタリングは、認知行動療法という心理療法にも活用されます。
<代表的な方法>
①活動記録表
自身の心と体の状態を可視化するために、日々の調子を採点しておく方法です。
一週間の中で、午前・午後のような各時間帯に【午前】心の状態=5点満点中2 体の状態=5点満点中3のように記録します。
より細かく把握したい場合は、各時間ごとに行っても構いませんが、持続して記録し続けることが重要です。
これらの記録を、一週間単位で振り返り、なぜそのような状態になったのかを考えたり、特有のパターンを見出したりすることで自身に対する気づきが生まれます。
②コラム法
コラム法は、自身が体験した出来事に対し、どのような考えや感情になったのかを記録していく方法です。
代表的な方法として7コラム法が挙げられます。
1状況(ストレスを受けた出来事・事実)
2気分(その時感じた気持ち)
3自動思考(その瞬間思ったこと)
4根拠(その思いを裏付ける事実)
5反証(自動思考に反する事実)
6適応的思考(バランスを持った考え方)
7今の気分(適応的思考を取り入れた後に感じる気分)
これらを出来事別に繰り返し行うことで、自身の状況を客観視でき、ストレスマネジメントスキルが向上します。
■ストレスコーピング
ストレスコーピングとは、受けたストレスに対して適切に対処する行動のことです。
一般的には以下の3つの方法があるといわれています。人によって得意とするコーピング種類は異なりますし、受けるストレスによって効果的なコーピング種類が変わることもあります。
できれば、特定のコーピング種類のレパートリーを沢山もっておくことも大事ですが、それぞれの種類からバランスよくレパートリーを持っておくことで、様々なストレスに対応できるようになります。
①問題焦点型
問題焦点型のコーピングとは、ストレスを発生させている出来事そのものに対して働きかける行動を意味します。
例えば、職場でハラスメントを受けている場合に転職をする、第三者に相談し、本人に働きかけてもらう、などです。
②情動焦点型
情動焦点型のコーピングとは、ストレスを受けた時に起こる自分の感情に対して働きかける行動を意味します。
同じく、職場のハラスメントを例にとると、休日にリラックスできる場所に行く、趣味に没頭する、などを指します。気分転換、と言い換えてもよいかもしれません。
③認知的再評価型
認知的再評価のコーピングとは、ストレスとなる出来事を別の視点で捉えなおす行動を意味します。
職場でハラスメントを受けた場合、相手を反面教師とし同じような振る舞いをしないように心がける、運悪く相手が不機嫌だったのではないかと考え直す、などです。
個人におけるストレスマネジメント効果
コーピングを活用できるようになることで、様々なメリットがあります。
■生産性の向上
ストレスを適切に管理することで、集中力を高め、業務に対する効率が向上します。効率が上がると業務に費やせる時間が増加し、仕事の質も向上します。
■健康の改善
ストレスは身体的および精神的な健康に悪影響を及ぼすことがあります。
早めのストレスマネジメントができることで、心身の健康が改善され、病気のリスクが低下します。
■創造性の向上
ストレスに振り回される時間が少なくなることで、物事を多角的に捉える余裕が生まれます。
これにより新しいアイデアや発想を生み出しやすくなります。
■自己管理能力の向上
心身が安定することで、計画性や順序を意識したうえで物事を進めやすくなります。
企業によるストレスマネジメント方法(導入)
企業単位で行えるストレスマネジメントの方法についてご紹介します。
まずは施策実施前の準備についてです。
■ 現状把握
やみくもにストレスマネジメントの施策を行うのではなく、自社がどのような状況に置かれているのか、何が課題なのかを明らかにすることが大切です。
やはり活用できるのがストレスチェックの集団分析結果です。
高ストレス者の高低、総合健康リスクや各指標を見ることで、行うべきストレスマネジメント施策の優先順位がわかります。
集団分析結果を読み解くことに不慣れであったり難しさを感じている場合は、ぜひ弊社にご相談ください。
■体制づくり
初めて自社でストレスマネジメント施策を行う場合は、いきなり規模の大きい体制を作ることは難しいかと思います。
小規模でよいのでチームを編成しましょう。例として、責任者を人事部の役員とし、リーダーを人事部長、メンバーが実務を担う体制が一般的です。
本格的に体制づくりを行う場合は、既にストレスチェックを実施している企業であればそのままに多様な体制でよいかと思います。
まだストレスチェックを実施していない企業であれば、代表者を責任者とすることで従業員に対するメッセージを効果的に発することができるでしょう。
企業によるストレスマネジメント方法(実践)
現状把握や体制づくりができましたら、各施策の実施段階となります。ここでは、実際に行われている施策についてご紹介します。
■研修
ストレスへの対処法を学ぶセルフケア研修、ラインケア研修、パワーハラスメント研修、セクシャルハラスメント研修、などの社内研修の実施も方法の一つです。
定期的に社内研修を実施することで、ストレスの対処法を確認することができます。
■1on1
1on1とは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。
1on1は評価や指導の実施だけでなく、上司と部下が対等にコミュニケーションを取れる場でもあります。
部下は感情や問題を整理でき、ストレスの軽減につなげることができます。
■メンター
1on1ミーティングと並行して、メンター制度を取り入れるのも効果的です。
1on1ミーティングは、基本的に上司と部下が行うものであるのに対し、メンターは直接利害関係のない別部門の先輩社員などが担うことが多く、各々の施策が重複することもないためお勧めです。
■ 職場環境改善
働く職場そのものの環境改善は、ストレッサーそのものを低減させる効果が期待できます。
実際に進めるためには、ストレスチェック制度を活用することをお勧めします。
ストレスチェックと職場環境改善の関係性については、以下について詳しくご紹介します。
■カウンセリング
専門家からストレスとの付き合い方を学べます。また、相談者自身がストレスについての理解を深める機会にもなります。
従業員がカウンセリングを受け、ストレスコーピングの知識を得て実践することで、生産性向上・職場環境改善が期待できます。
企業によるストレスマネジメント効果
これらの取り組みについて、一定期間後に効果測定を行うことで施策の重要性について経営層の理解を得やすくなります。
効果測定については計画段階で意識するようにしましょう。手間や工数の問題がありますので、ストレスチェック結果を用いるとよいでしょう。
■生産性の向上
個人レベルでストレスマネジメントができるようになると、不注意やケアレスミスなどの発生率が低下し、勤怠状況も安定し始めます。
こうした状況に加え、職場単位でストレスマネジメント施策を効果的に運用できれば、組織として予防施策がとれるということになりますので、効果はより顕著に表れるでしょう。
■離職率の低下/満足度の向上
職場におけるストレスマネジメントが取り組みとして行われることで、従業員の満足度が向上し、離職率が低下します。
従業員が職場に対してポジティブな感情を持つことで、長期的な雇用が促進されます。
以下の記事は、若手の社員の離職について掘り下げていますのでぜひご参考ください。
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■ハラスメントの防止
ハラスメントは根深い問題ですが、一般的に言われているのはハラスメント行為者自身も何らかのストレス状態に置かれているということです。
ハラスメント行為者は、受けたストレスを社会的に受け入れられる形で処理することができずに、他者を攻撃する手段を採用してしまうということです。
ストレスマネジメントのスキルが上がることで、他者への攻撃以外の手段を採用したり、周囲の理解力が向上することで防止につながりやすくなります。
まとめ
会社におけるストレスマネジメントの導入と実践は、従業員一人ひとりの幸福と企業の持続的な成長につながります。
従業員のストレスを軽減し、適切に管理することで、より健康で生産的な職場環境を実現することが可能です。
本記事でご紹介した方法を参考にして、ストレスマネジメントの対策を講じてみてはいかがでしょうか。