お役立ち情報 Useful

UP

メンタルケア

3分で読める!人事お悩み相談室~休復職を繰り返してしまう社員~

26101029_s.jpg

普段より私どもは、メンタルヘルス対策や健康経営をご支援させていただく中で、人に関するさまざまなご相談をいただきます。
このコラムは、多くの人事の方々からいただくお悩みにお答えする形で、どうしたら従業員の皆さまに、
より元気に、より幸せに働いてもらえるのか、考えていこうという内容になっております。

さて、メンタルヘルス対策のご支援をする中で、創業当初から最も多いご相談は、

「休職していた社員が復職をしても再発をし、また休職となってしまうケースが多い」・・・というものかもしれません。

大手企業の場合、制度が手厚いために経済的な心配を余りすることなく「長期に渡って(1年間以上)休んでしまう」・・・というケースのご相談も多いです。どちらのケースも人事の方にとっては、なかなか対応が大変ですよね。

休復職を繰り返したり、休職が長期に渡ってしまうのには、いくつか理由が考えられます。

 

最も考えられるのは、

①「重症化してしまってから、休職に入った」からだと思います。

メンタルヘルス不調は重症化すればするほど、また、再発を繰り返すほど、さらなる再発を引き起こしやすくなります。休復職を繰り返してしまう人は、「なんとか復職したい。できるだけ早く、また頑張って働かなくては」という意識が高いがために、体調が充分回復しないうちに、早めに復帰しようとして、結局また具合が悪くなってしまう・・・というパターンが多いようです。

ですから、対策としては大きく2つです。

  • 重症化する前に早く見つけて、早く対応する!
  • 焦らせず、1回の休職でしっかり回復させる!

・・・とは言っても、不調者予備軍を早く見つけるのって、難しいですよね。ストレスチェックの高ストレス者へ産業医面談の勧奨をしても、ほとんど手が挙がらないし・・・。

王道なのは、管理職の目に頼ることでしょう。
普段より、一番身近で本人の仕事ぶりを見ている管理職が、不調の予兆を見つけて、人事なり産業保健スタッフなりに繋いでくれることが、非常に有効です。そのため、定期的な管理職向けの研修は必須といえるでしょう。

ただ残念ながら、上司が全員アンテナが鋭いわけではなく、また、そもそも非常に忙しいため、常にアンテナを張り続けることは正直難しい面もあるかと思います。

そこで、当社の専門職は、「能動的にお呼びする」ということをします。
例えば、ストレスチェックで高ストレスだった部署のメンバー全員面談、入社や異動、昇進などの変化点を経験した人の全員面談、プレゼンティーイズム測定でスコアが悪い人の全員面談など。ターゲットを決めて、とにかく全員お会いするのです。

すると、潜在的な不調者を発見できたり、改善すべき職場の問題が浮き彫りになったりします。自分からは手を挙げない方々も、呼ばれていざ専門職に向かい合うと、色々な本音を話してくれるものなのです。

そして、休職に至った場合には「焦らせず、1回の休職でしっかり回復させる」ために、休職前~休職中~復職準備期~復職判定~復職後・・・と、その時々で、その方がどのような状態にあるかをしっかり見極め、丁寧に、継続的に関わっていきます。本人が焦って復職しようとすることもありますが、そんなとき、「急がば回れ」だということをわかってもらうのも、役割のひとつです。

また、休復職を繰り返してしまう理由として、

②「不調となってしまった『原因』に、まったく手をつけていない」
ということもあると思います。

 

メンタルヘルス不調になってしまった原因が職場環境にあるのに、(例えば、人間関係の問題や過重労働など)改善できていない。同じ状況の職場に戻れば、また同じように不調になってしまうのは、目に見えています。

環境調整。

これは、復職する人のためにも、また新たな不調者を出さないためにも、非常に重要なことです。

本人に原因がある場合もあります。本人のものの見方や受けとめ方に問題がある場合、どうして不調になってしまったのか、また不調にならないためにはどうしたらいいのか、復職準備期に、本人と一緒に、時間をかけて振り返ることが必要です。

皆さまの会社では、本人に並走して、そのような時間を持ってくれる専門職を確保しているでしょうか?
さて、その他に、休復職を繰り返したり、休職が長期に渡ってしまう理由は何でしょうか。

それは、

③「本人の就業意欲が低い」場合があることです。

なかなか判断が難しいのですが、人事の方によると、「健保から給付(傷病手当金)もあるし、できるだけ長く、休めるだけ休もう」という「制度を最大限活用する派」の社員の方が、一定数いるようです。

皆さまの会社の就業規則の休職制度には、いわゆる「通算規定」が付いていますか?例えば「休職を命じられた者が、休職期間満了前に復職した場合で、復職後6か月間を経ないで、再び当該休職事由と同一ないし類似の事由により欠勤したときは、休職を命じる。この場合、休職期間は中断せず、前後の期間を通算する。」という規定ですね。

この規定は、休復職を繰り返すことで休職期間が延々と長くなることを防ぐための規定ですが、「制度を最大限活用する派」の社員は、休職期間満了直前でなんとか復職し、復職後6か月ちょっと、低空飛行のままでもなんとか働き、休職期間をリセットしてから、また目一杯休職る・・・ということを繰り返すのです。

こういうタイプの社員に懲りた企業は、「回数制限」をかけたりもしますが、就業規則に「通算規定」はあっても、「回数制限」がある企業は、多くない印象です。

ちょっと仕事をしては、またすぐに休んでしまう人を見て、周りの同僚は「なんか、ズルい・・・」という目で見がちですが、この人は、本当に「得」をしているのでしょうか?
仕事をしないでずっと保障を受けている。一見「得」をしているようにも見えますが、この人の長い人生を考えたときに・・・どうでしょう。

働いていれば得られたであろうキャリア・・・経験、スキル、知識、人との繋がり。かけがえのないこれらのものを、働き盛りの期間に充分得ることができず、この人は、この先も続く長い人生を、充実したものにしていけるでしょうか。かつて自分が夢見ていたキャリアを、築いていくことができるでしょうか。

当社の専門職は、この人の「長い人生」を捉えているからこそ、なんとか相手をエンパワーメントしようとします。

どうすればこの人がまた元気に働けるようになるだろうか。

どのように接すればこの人が働く勇気を持てるようになるだろうか。

この人が前向きに働くためには何が必要なのだろうか。

寄り添って、親身になって、一緒に考えようとするのです。

休復職を繰り返してしまうケースが多いのは、どこかで負の循環が生まれてしまっているからです。メンタルヘルスの専門家の手を借りて、負の循環にエイッ!と楔を打ち、例え不調者が出てしまっても、よい循環の中で対応ができるよう、仕組みを整えていきましょう。

------------☆筆者プロフィール☆------------


桜又 彩子(さくらまた あやこ)


SOMPOヘルスサポート株式会社
シニアゼネラルコンサルタント

システム開発会社の人事部で7年間勤務の後、
2007年よりSOMPOヘルスサポートにてメンタルヘルスおよび健康経営の
コンサルティング業務、研修講師などに従事。


【保有資格】

特定社会保険労務士 
キャリアコンサルタント
シニア産業カウンセラー
ポジティブ心理学プラクティショナー
健康管理士一般指導員  など