お役立ち情報 Useful

UP

メンタルケア

3分で読める!人事お悩み相談室~休復職対応に関するQ&A~

ポイント、上向き階段.jpg

普段より私どもは、メンタルヘルス対策や健康経営をご支援させていただく中で、人に関するさまざまなご相談をいただきます。このコラムは、多くの人事の方々からいただくお悩みにお答えする形でどうしたら、従業員の皆さまに、より元気に、より幸せに働いてもらえるのか、考えていこうという内容になっております。

さて、先日、メンタルヘルス不調者対応をテーマにセミナーを実施した際、多くのご質問をご参加者様からいただきました。特に多かったのは、休復職関連のご質問でした。同じことでお悩みになっている企業様は多いのでは?と感じましたので、いくつかのQ&Aにつき、本コラムでもご共有したいと思います。

【ご質問1】

休職中の社員についてです。医療機関側から本人へ「会社とはなるべく連絡を取らないように」と言われている場合、どのように対応したらよいでしょうか。

【回答】

主治医が「会社とはなるべく連絡を取らないように」と、本当に言っているのか、という確認がまず必要だと感じました。本当に言っているとした場合、考えられるケースはいくつかあります。

  • 本人が真面目過ぎて、会社の状況が気になり、本人から会社に頻繁に連絡をとろうとするため、休養に専念させるために言っている。
  • 特定のストレス要因になる人物(上司など)が存在し「会社」というのは、具体的にはその人物のことを指している。産業保健スタッフが連絡をとる分には問題がない。
  • 主治医が本人の話をすべて真に受けて、会社の対応や在り方に疑問を持ってしまっており、本人と一緒に会社に対して敵対心を持っている。

いずれにせよ、貴社の産業医もしくは産業保健スタッフ、または人事責任者より、主治医の指示の意図を、本人経由でなく直接確認していただき、誤解がある場合は解消に努め、コミュニケーションを取りながら、スムーズな復職のためには必要に応じて、本人に定期的にご連絡を取る必要があることを主治医にご理解いただいたほうがいいと思います。

【ご質問2】

不調から回復している様子なのですが、本人は不調のままの扱いをしてほしいと願う傾向があり、困っています。

【回答】

不調のままの取り扱いをしてほしいと本人が申し出るということは、そのほうが、ご本人にとってメリットがあるということですね。メンタルヘルス不調と判断されている間は、業務調整といった配慮が行われたり、パフォーマンスが上がらなくても大目に見られたりするために、そのような申し出になるのかもしれません。ですが、会社としては、もちろんそれでは困ることと思います。

本当に不調で回復していないと主張するのであれば、きちんと休職をさせて、産業医や主治医の意見を定期的に確認しながら、通常業務をこなせることを目標に治療に専念すべきだと思いますし、本人がそれでも「回復しない」と主張するのであれば、休職期間満了退職ということも視野に入ってきます。

また、体調は回復しているのに「回復していないことにしてほしい」と願うのであれば、職場環境や人間関係、仕事のさせ方や目標の持たせ方など、何かしらに問題があるのかもしれません。そこにきちんとメスを入れて、本人がそう主張せざるを得ないような状況がないのかどうか、確認するのがよろしいかと思います。

ご本人が回復と通常業務に向けて、意欲を持てるような環境調整が必要かと思いますので、現場の状況を丁寧にご確認いただければと思います。

【ご質問3】

長期休職が決まった時に、対象者に休職中の注意など説明するタイミングに悩んでいます。

【回答】

通常ですと、休職に入る前のタイミングで、休職中の注意や定期連絡の頻度や方法、休職期間満了日付など、必要なことをしっかりお伝えしておくことが大切になります。ただ、実際には、休職が決まった時には、有休などを使ってすでにお休みに入ってしまっている、余りにも具合が悪そうで、なかなか事務的な事項について伝えられる状況ではない、など、お困りのケースもあるのだと推察いたします。

対応策としては、必要事項をフォーマット化しておき、書面でお渡しする、という方法がよいかと思います。書面でしたら、休職後になってしまっても、郵送で届けることができますし「言った・言わない」のトラブルにも発展しないと思います。

ただ、書面を郵送して終わり、というのは事務的すぎると受け止められる可能性もありますので「よろしければ、口頭でもご説明いたしますので、オンラインミーティングをセットしたいと思いますが、いかがですか?」と打診することをお勧めいたします。

そして、休職期間中も、定期的に連絡をとって、復職に向けて体調がどの程度回復しているのか、どのような生活を送っているのか、何はできるようになって、何はまだ困難なのか、随時確認していく必要があります。その確認が定期的にあることで、本人も、復職への意欲を失わずに、回復に努めることができます。

また、どうしても回復せずに復職が難しいという場合でも「休職期間中もずっと心配をしてくれて、手をかけてくれた」という実感が本人にありますと、ご本人もある程度納得して、休職期間満了退職を受け入れる素地ができると思います。

【ご質問4】

休職中の社員について、本人に復帰の意思はあるのですが、休職期間満了直前でも主治医の判断がはっきりしない場合の対応について教えてください。

【回答】

主治医の診断書というのは、ときに言葉足らずで、会社側としては、どう解釈してよいのか困る、というケースも多いですよね。そのような場合、貴社フォーマットの「情報提供依頼書」を作成しておき、そちらへの記入をお願いする、というのが一番よい方法かと思います。厚生労働省からも、いくつかフォーマット例が出ておりますので、ご参考になさってください。

https://kokoro.mhlw.go.jp/etc/pdf/return-jouhouteikyo.pdf

もしくは、主治医との面談に、本人の同意を取り付けて、人事が同席するというのもひとつの方法です。本人に復職の意思がある場合「会社としては、主治医の判断を確認しないと、正式な復職許可が出せない」と説明すれば、本人の同意はとりやすいので、ご検討いただればと思います。

また、産業医の復職判定面談は、ご実施されていますでしょうか?産業医は、会社側立場にたって判定するものですので、主治医の診断書が例え「復職可」であっても、体調回復が疑わしい場合「復職不可」の判定をすることができます。そして、その意見をふまえ、最終的に判断をするのは、会社の人事責任者ということになります。

【ご質問5】

メンタル不調者の欠勤~休職期間満了までの期間で、復帰か退職かの意思確認の適切なタイミングを教えてください。復帰の意志があった社員から、休職期間満了間近に退職すると言われたことがあります。焦らせたくなかったのですが、どのタイミングで意思確認すればよかったのかと考えてしまいます。

【回答】

もっと早く確認していれば、復職という選択肢もあったのではないかと、内心悔やまれているようなご心情が伝わってまいりました。そもそも「休職をする」ということは、メンタルヘルス不調になった時点で退職という選択をせず、会社の制度を利用して休むという選択をしたわけですから、基本的には「復職をする」ことが原則ですし、本人は、将来的には復職の意思があるからこそ、休職に入るわけです。

そのため、休職期間中も、定期的に連絡をとって本人の状況を随時把握しておく必要があります。休職期間満了間近になって退職する、と言い出すのは、体調が思うように回復せず、復職できる自信がなくなったとか、回復はしているが、職場に戻るのは自信がないとか、思った以上に回復していて、密かに転職活動をしていたとか、何かしら理由があるものと思います。

そのあたりの気持ちも含めて、よくよく状況を把握しておくために、ある程度回復した時点からは、定期的に産業保健スタッフや人事が、面談を実施することがよいと思います。

------------☆筆者プロフィール☆------------


桜又 彩子(さくらまた あやこ)


SOMPOヘルスサポート株式会社
シニアゼネラルコンサルタント

システム開発会社の人事部で7年間勤務の後、
2007年よりSOMPOヘルスサポートにてメンタルヘルスおよび健康経営の
コンサルティング業務、研修講師などに従事。


【保有資格】

特定社会保険労務士 
キャリアコンサルタント
シニア産業カウンセラー
ポジティブ心理学プラクティショナー
健康管理士一般指導員  など