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ラインケア|メンタルヘルス

中間管理職のメンタルヘルス対策、人事はどう対応すべきか

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いま、中間管理職が最もストレスフルといわれています。 多くの会議にメンバーからの相談、上層部からの進捗確認、チャットは常に未読がたまる。そんな光景、思い当たりませんか。社内で「板挟み」になりやすいのが中間管理職です。上からは成果とスピードを、下からは納得感と育成を求められる。どちらも大切だからこそ、両方に応えようとするほど負荷がかかります。
人事の役割は、管理職個人の頑張りに依存させないことです。制度、研修、環境、データ活用を組み合わせて、現場が動きやすい土台を整えること。「何から始めればいい?」と迷ったら、ぜひ本記事をご参照ください。

中間管理職特有のストレスとは

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■多岐にわたる業務
「会議のための準備」と「会議後のフォロー」で1日が終わる。つい残業にしわ寄せがそんなことはありませんか。
管理職の仕事は、目標達成、調整、育成、報告、プロジェクト推進に加えて、段取りや火消しといった見えにくい仕事であふれがちです。オンライン会議が増えた今は、集中が切れやすく回復時間も取りづらい。
結果として、疲労や睡眠不足、意思決定の質低下、イライラの増加につながります。

■独特の上下関係
上層部の「もっと速く、確実に」という期待と、現場の「丁寧に、納得感を持って」という要望。どちらも正しいからこそ、間に立つ管理職は苦しくなります。強い指導が必要な場面と、ハラスメント防止の配慮。そのバランスは簡単ではありません。「高い目標」と「心理的安全性」を両立させるには、時間と対話が要ります。
日々の小さなすれ違いが積み重なる前に、解きほぐす仕組みが必要です。

■余裕のない人材育成
リスキリング、1on1、評価フィードバック。多様なメンバーに合わせた支援は、やりがいがある一方で負荷も大きいものです。リモート配属や短期成果のプレッシャーは、育成に必要な「余白の時間」を削ります。
部下の育成を頑張るほど「自分の時間がない」と感じやすくなり、これがストレスの基になっていきます。

■不明瞭な責任範囲
裁量は限られるのに、責任は広がる――労務管理、情報セキュリティ、コンプライアンス、顧客対応、改善推進。ミスが許されにくい領域が増えました。「決められないのに、責任は自分」という状況は、無力感を呼び、燃え尽きにつながります。
権限と責任のバランス調整は、人事が介入できる重要ポイントです。

■今後のキャリア
 「ミドルの壁」を感じることはありませんか。役職定年や再編、専門性かマネジメントかの選択。将来像がぼやけると、挑戦よりも「減点を避ける行動」に偏りやすく、チームにも影響します。
見通しがあるだけで、心は軽くなります。キャリアダイアログの定例化など、仕組みで支えたいところです。

■働き方改革の負の影響
 働き方改革は大切です。でも、運用の負荷が管理職に集中しがちです。残業管理、休暇促進、テレワーク運用、ルールの周知「全部やる」は現実的ではありません。制度があっても、人数やスキル、ツールが足りなければ、現場は疲弊します。やることを減らす、やり方を変える。この視点が欠かせません。

管理職に特に必要なセルフケア

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ここからは、管理職自身が今日からできることをお伝えします。何か一つでも、セルフケアの方法を身につけておくことをおすすめします。

■アンガーマネジメント
アンガーマネジメントは部下指導や職場環境の改善に不可欠なスキルです。具体的には、怒りを適切にコントロールして冷静な判断を下し、パワハラを防止しながらも、必要な場面では相手に伝わるように指導する能力が求められます。
具体的な方法を身につけるためには専門の研修を受講することが望ましいですが、書籍などでもある程度の知識を身につけることができます。

■ライフスタイルの見直し
生活の土台が整うと、感情の波も穏やかになります。

 ・睡眠
就寝・起床時刻の固定、就寝前30分の画面オフ、朝の光を浴びるなど。

 ・運動
運動する習慣がない場合でも、散歩や階段の利用など。

・食事
甘い飲み物をお茶に変え、血糖値の過度な上昇を防ぐ、夕方以降のカフェインを控えるなど。

■マイクロレストとマイクロジョイ
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3分の小休憩(肩回し、目を閉じる、外の空気を吸う)を15回。小さな喜び(お気に入りの音楽、香り、写真)を仕事の合間に挟む。回復は「まとまった時間」だけではありません。小分けにするほど、日中の安定感が増します。

人事として必要な管理職のメンタルヘルス対策

ここからは、人事としての打ち手について解説します。

■中間管理職を対象とした研修
座学で終わらせず「わかる」を「できる」に移行させる研修を意識しましょう。

・ラインケア研修 不調の早期サイン(自身・部下の双方)の見分け方、気になる人への声のかけ方、産業保健との連携、事例検討など。

1on1、フィードバック研修
基本的な考え方、目標設定、動機づけなど。

・ハラスメント研修
法律の理解、グレーゾーンの判断、発見した場合の初動など。

・アンガーマネジメント研修
怒りへの気づき、6秒間ルール、適切な叱り方、感情の記録など。
アンガーマネジメントの要素を取り入れた管理職研修について、ご関心がある方はこちら

■ストレスチェック結果(集団分析)を用いた職場環境改善
個人結果だけでなく、部署単位の傾向を活かしましょう。具体的には、以下の記事をご参照ください。
記事:集団分析結果を管理職にフィードバックする際に気をつけるべきこと

■相談窓口の設置と周知
管理職ほど、相談をためらいがちです。「弱みを見せたくない」「評価が心配」といった声を聞くこともあります。だからこそ、人事は窓口を使いやすく見せる工夫が鍵です。
窓口の種類(産業保健、外部EAP、社内メンター、ハラスメント窓口)を周知することはもちろん、守秘義務や相談者に対する不利益な扱いがないことを明確に伝える必要があります。

■中間管理職全員を対象としたカウンセリング体験
1回、3060分のショートカウンセリングを標準化し、相談することへの抵抗を減らす方法もおすすめです。

■中間管理職同士のつながりの強化
1回など定期的なタイミングで、互いに抱えている課題の共有や自部署における事例交換を行いながら、管理職同士の結びつきを強くすることも効果的です。

■メンバー層を対象としたフォロワーシップ教育
メンバー層に対してフォロワーシップ教育を行うことも効果的です。単に指示を待つだけでなく、自ら考えて行動し、管理職との効果的な連携や組織への貢献を意識する人材を増やすことで、管理職の負担も軽減されます。

トップメッセージの重要性

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トップからの強いメッセージはとても効果的です。なぜなら、トップの言葉は「組織として何を優先するか」を宣言し、管理職の迷いを減らし、安心して行動する許可を与えるからです。管理職は日々、厳しい目標、育成、ハラスメント防止、業務改善、働き方改革の運用など、相反しがちな要求を同時に回しているためです。
自社の方向性、優先すべき事項、期待される役割などを今一度明確にし、メッセージとして発信することで、管理職の判断負担を減らすことができます。

■なぜ中間管理職に特に効くのか
・役割期待が揺れやすいから
上からの指示と下からの要望のずれを、日々自分の中で調整しています。トップメッセージにより判断基準が明確になることで、日々の調整負荷が下がります。

KPIの板挟みがあるから
営業数値の創出、人材育成、日々の業務など、評価に反映されやすい業務とそうでない業務が混在しています。特に短期的に評価しづらい業務に対して、トップ自らその事実を認めつつも重要視している姿勢を示すことは、中間管理職が受けるプレッシャーを減らすことにつながります。

・リスクを背負いがちだから
トラブルの初動対応、難しい顧客面談、部門間調整など、期待される役割が多い一方で責任を負いやすい場面も多いです。トップが判断基準を明確に示すことで、心の負荷は軽くなります。

まとめ

中間管理職は、業務量、板挟み、権限と責任のギャップ、キャリア不安など、ストレスを受けることが多い立場です。 そのため、管理職自身で行えるセルフケアの方法を身につけておくことが重要ですし、会社も研修や制度の構築、トップからのメッセージによって支援体制を強化することが求められます。

最近の若手社員は、以前より出世を望まない傾向にあるといった声もあります。中間管理職のケアをしっかりと行い、いきいきと働く姿を若手に見せることで、管理職になりたい若手層を増やすことも重要です。