UP
人事向け!従業員のモチベーション低下原因と向上施策のポイント
目次
そもそもモチベーションとは?
従業員のモチベーションが上がらないと感じたら、まず何を行うべきでしょうか?
本記事では、特に人事向けに押さえておくべきポイントをまとめました。
外発的動機(外的モチベーション)
外発的動機は、報酬や評価といった外部の要因から生まれる意欲のことです。短期的には効果的ですが、持続性が低く、慣れや体制によって効果が薄れることもあるため、適切なバランスが必要です。さらに、外発的動機は、競争を通じて従業員のパフォーマンスを向上させることができる一方で、過度な競争は職場環境を悪化させる可能性があるため、慎重な運用が必要です。
内発的動機(内的モチベーション)
内発的動機は、自身の内側から生じる意欲のことです。仕事そのものに対する興味や達成感から生まれます。これは長期的にモチベーションを持続させる効果があります。半面、外発的動機よりも効果を感じられるまで時間がかかるという特徴があります。内発的動機をどう生み出すかが企業にとって重要な鍵ですが、個人の価値観の差もあるため、複数の施策を組み合わせる必要があります。
モチベーションとエンゲージメントの違い
モチベーションが個々の行動を促進するものであるのに対し、エンゲージメントは組織全体への積極的な関与と愛着を示します。言い換えると、モチベーションは基本的に行動を起こすための原動力となる力であり、エンゲージメントは、各人が主体的に業務や組織に関わっている状態そのものを指します。
どちらがより重要というわけではなく、モチベーションが高まり行動を起こし、エンゲージメントが高い状態を作り出すとも言えますし、エンゲージメントが高い状態だからこそ結果が出やすく、高いモチベーションを維持できる、とも言えます。
両者を理解し、バランスを取ることが企業成長の鍵となります。
従業員のモチベーション低下を招く要因
・主観的評価と客観的評価のズレ
職場ではよく起こりうることですが、自身が行っている業務に対する自己評価や、自分自身に対する自己評価と、他者からの評価に認識のズレがあるとモチベーションが低下しやすいといわれます。本人に対する適切なフィードバックを繰り返し行い、納得感を得られるようにする取り組みが求められます。
・評価の曖昧さ、評価プロセスの不透明さ
評価が曖昧だと従業員は不満を感じ、モチベーションが低下します。透明性のある評価制度を構築し、フィードバックを明確にすることが重要です。評価基準を社内で周知するだけでなく、評価プロセスの各段階で従業員と直接対話を行うことで、彼らが評価に納得できるようにします。評価プロセスが不透明であると、従業員は自身の努力が正当に認められていないと感じる可能性があるため、評価の透明性を高めることは、組織全体の信頼感を築くためにも不可欠です。
・結果が出るまで時間がかかる業務内容
短期間で結果がでる業務では、自身が行った業務の結果を知ることができ、モチベーションを高められやすい環境にあります。例えば、お客様から「ありがとう」と直接感謝を言われる業務なども当てはまります(半面、下がることもあるとも言えますが)。一方で、完成まで半年や年単位を必要とする開発業務や、プロジェクトなどでは、結果をイメージしづらく、途中でモチベーションが保てなくなる可能性があります。この場合、マイルストーンを配置しながらマネジメントをしていく必要があります。
・キャリアパスへの不安
努力した先に見えるキャリアパスは、モチベーションを高める要素となります。しかし、自身の業務と今後のキャリアパスが結びつきづらい状況では、モチベーションは低下します。この状態で3年後や5年後を描けといわれても逆効果となりますので、まずはモデルケースやロールモデルを提示することで今後のヒントとなる情報を与えることが必要です。
・待遇面、福利厚生面など労働環境への不満
報酬や福利厚生が他社より劣っている場合、従業員のモチベーションが低下しやすくなります。現在では他社の労働環境が、インターネットやSNSを通して手軽に入手しやすくなりました。こうした時代においては、経営側も労働環境を整えていく必要があります。報酬面もそうですが、柔軟な働き方や、健康維持を支援するプログラムを取り入れることで、従業員の満足度を向上させることができます。
・成長への行き詰まり
自らの担当業務に成熟し、これ以上の成長が見込めないと判断した場合にもモチベーションの低下が起こることがあります。人によっては、低刺激となったこうした環境に満足する場合もありますが、今以上の成長が期待できない現状に不満を感じる人もいます。定期的なキャリア面談を行い、不満が高まる前に本人の情報をキャッチしておく必要があります。
・人間関係が良くない
単独で行う一部の業務を除き、多くの業務は何かしら他者と関わる必要があります。例えやりがいのある業務であったとしても、その過程において人間関係で嫌な思いをする場合は、モチベーションが高まりにくいといえます。人間関係の悪化はハラスメントにもつながるため、早期の対応が必要でしょう。
モチベーションは可視化できるのか?
・従業員アンケート
定期的な自社アンケートの実施は、やり方次第で有効な手法といえます。質問項目をしっかりと設計し、従業員が匿名で意見を伝えられる場を設けることで、より率直なフィードバックを得ることができます。その結果をもとに、経営層や人事担当者が改善策を講じることで、実効性のある組織改善が期待できます。アンケートの結果を公表し、組織としての対応策を明確にすることで、従業員にとっての透明性を確保し、彼らが声を届ける意義を実感できるようにします。
・外部の専門的なサーベイの実施
自社アンケートよりも詳細なモチベーション把握をしたい場合は、専門家によって作成されたサーベイの実施が有効です。従業員アンケートでは自社における変化しか捉えられませんが、専門的なサーベイを利用することで、他社との比較ができるようになります。これにより、より客観的な視点で自社の状況を把握でき、対策の優先順位も付けやすくなります。
・ストレスチェック結果からの考察
ストレスチェックは、リスクの高い従業員を洗い出し、医師面接に繋げることに重きを置いたサーベイとなりますが、項目の中にはモチベーションに関連の深いものがあります。特に職業性簡易ストレス調査票における「働きがい」の項目は、モチベーションそのものではないにせよ、影響を与えやすい項目といえるでしょう。
但し、解釈には専門知識が求められるため、できれば知識のある産業保健スタッフの力を借りるか、外部の専門会社に分析を依頼したほうが良いでしょう。
従業員のモチベーションを上げる施策例
・評価プロセスの透明化
評価プロセスの透明化は、従業員の信頼感を高め、モチベーションを向上させる強力な手段です。評価基準や方法を明確にし、各ステップでの透明性を確保することで、従業員が公正に評価されていると感じられる環境を整えます。さらに、定期的なフィードバックを通じて、従業員が自分の進捗やパフォーマンスを確認し、成長を実感できるようにすることが重要です。透明性のある評価プロセスの実施は、従業員の不安を軽減し、彼らが積極的に目標達成に向けて努力する意欲を高めることに繋がります。
・キャリアパス例の提示
具体的なキャリアパス例の提示は、従業員にとって成長の指針となります。提示した例を基に、定期的にキャリアについて意識してもらう時間を設けることが重要です。さらに、社内でのキャリアパスに関連する情報を一元管理し、従業員が自らのペースで活用できるようなプラットフォームを整備することも、キャリアの発展に寄与します。キャリアパスの明確化は、従業員に安心感を与え、彼らが自分の未来に対するビジョンを持つための重要な要素です。
・労使双方のコミュニケーション機会の創出
労使間のコミュニケーションは、組織の健全な運営に欠かせません。定期的なフィードバックセッションやオープンな意見交換会を通じて、従業員のモチベーションが高まりやすくなります。出た声に関し、直ぐに対応をしなければならないという懸念があるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。会社側としては優先順位をつけ、中長期的にも対応していく姿勢を見せることが重要です。心理的安全性と呼ばれますが、従業員が安心して意見を述べられる環境を整えることで、組織全体の活性化に寄与します。
・ストレスチェック後の職場環境改善活動
ストレスチェックの集団分析を実施し、出てきた結果に応じた職場環境改善活動も従業員のモチベーションを高める要素となりえます。ストレスとモチベーションは決して別の要素ではなく、互いに関連し合っている部分もあります。従業員がどんなストレスを受けているのか、そのストレスは会社として対応すべきものなのかを協議し、一つ一つ対応していくことでモチベーションにも良い影響を与えます。
・研修システムの見直し
既存の研修システムが本当に機能しているのか、一度課題点を洗い出しすることも有効です。研修内容が、実務やスキルアップに適合している場合は研修で身に着けたスキルを実務で発揮するという動機が生まれますが、形式的なものに終始した場合、研修時間だけ浪費している感覚が生まれ、モチベーションは高まりません。
・報酬制度の充実
報酬は「外発的動機」に位置づけられるため、重視しすぎるとデメリットもありますが、正当な結果に正当な報酬を与えることは公正感(公平感ではない)が増しモチベーションアップの効果も期待できます。先に挙げた対策を併用するとよいでしょう。
・注意点!全体的にモチベーション低下が蔓延している場合
離職者が相次ぎ、平均在籍日数が短い企業の場合は、モチベーション施策が却って逆効果になる可能性があります。従業員が疲弊しきっていないか、会社に対しての信頼感が失われていないか、これらを慎重に吟味すべきです。場合よってはモチベーション施策より先に「労働安全衛生面」での対策を打つほうが良いかもしれません。いずれにしても、専門家の力を借りることも検討されるべきでしょう。
最初に行うべきはモチベーションの可視化
いずれにしても、モチベーション向上施策を検討するうえで、最初に行うべきは現状把握です。正しい現状把握をせずに、思い込みだけで施策を検討してしまうと、効果が出なかったり、却ってモチベーションの低下を招く危険性があるため、アンケートやサーベイなどで可視化をすることをお勧めします。あらかじめ可視化をしておくことで、施策後の効果測定にも役立ちますし、経年変化も追うことができます。
特に初めてモチベーション施策を検討する場合は、初年度だけでも外部の専門家の力を借りることで、全体の流れを知ることができ大いに役立ちます。当社では、モチベーションに関連が深いといわれるエンゲージメントを測定する専用のサーベイをご提供しています。また、ストレスチェックからモチベーションの状況を推測することも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。