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3分で読める!人事お悩み相談室~自社におけるプレゼンティーイズムとは何なのか?~
健康経営に関連するご相談でいいますと、やはり「プレゼンティーイズム」に関してのお悩みが多いようです。
・どのツールを使えばいいか
・何をKPIにするのが適切か
・測ってはいるけれど、活用できていない
・どうすれば数値が改善するのか
・実績値や目標値を社外公開すべか
これらのお悩みは、プレゼンティーイズムを概念的にとらえるだけでなく「自社におけるプレゼンティーイズムとは何なのか」ということを具体的に検証していくと、解決していくと思います。
アメリカにおける先行研究によれば、健康に関連する企業の総コストのうち、医療費や薬剤費(直接費用)は24%を占めるに過ぎず、生産性の損失(間接費用)が約75%を占めるといいます。その中でも最大のコストは「プレゼンティーイズム」です。
産業医科大学産業保健経営研究室が主要な研究フィールドとしているコラボヘルス研究会において、日本人12,350人を対象とした調査でも、健康問題による損失割合はプレゼンティーイズムが64%を占めていました。(医療費や薬剤費が25%、アブセンティーイズムが11%)
改めて、プレゼンティーイズムとは「何らかの健康問題を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態」を指します。
企業は社員が出勤している限り、多くはその労働時間に対して対価を支払います。社員が健康問題や心身の不調により、対価に見合う労働を提供できていないとしたら、その「ギャップ」がプレゼンティーイズムとなるわけです。企業にとっては「見えない損失」「水面下の損失」です。
何らかの健康問題を抱えながらも、休むほどではない!と一生懸命に出社し、なんとか仕事に取り組むものの、思うように成果が出せない社員の方もつらいですし、対価に見合う働きを受け取れない企業側もつらいのです。
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本記事では、健康経営の効果測定における重要指標「プレゼンティーイズム」と、測定ツール「WFun」について解説いたします。プレゼンティーイズムとは?
【関連サービス】
経済産業省が推奨しているプレゼンティーイズム測定ツール「WFun」
健康問題で業務に困っている従業員を個別フォローしませんか。
プレゼンティーイズム測定ツール「WFun」は、個別フォローに特化した日本発のアセスメントです。
ところで、当社では、「WFun」というプレゼンティーイズム測定ツールを、開発者である産業医科大学の藤野先生から委託を受け、企業に提供しています。
昨年10月に上梓された「健康経営を科学する!実践を成果につなげるためのエビデンス」(大修館書店)という本の中で、このWFunを活用した事例が紹介されていました。
ある食品製造業(従業員数約1000名)での事例で、WFun中等度以上のスコア39名に産業医がインタビューした結果「介入が必要」と判断したケースが9例あったそうです。
- 発注ミスが多く、そのミスを責められることが多かった社員は、肥満による「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」が判明した。(病気の影響で、昼間、眠気が強かったのでしょう)
- 上司の言葉によるパワーハラスメントが原因で、イライラして寝付けず、作業能率が落ちていた。ハラスメント調査に繋がった。
- 入社時の教育が充分でなく、作業が滞り、同僚との関係性が悪化していた。教育制度の確認と見直しに繋がった。
- 仕事量が多い管理職で、同僚から期待され過ぎ、責任の大きさに対して自信を持てなくなっていた。椎間板ヘルニアによる中途覚醒が頻繁にあった。管理職へのメンタルヘルスケアの必要性が再認識された。
- 繰り返し作業により、首・肩・腰と全身に筋骨格系の痛みがあり、寒い季節にはそれが一層強くなっていた。作業環境の見直しに繋がった。
- 重いものを持ち上げる作業で、急性腰痛を3回経験していた。腰痛が再発することに不安を感じていた。心理的なサポートや作業環境の見直しに繋がった。
- 身長が低いため、つま先立ちでの作業をしており、腰痛に悩まされていた。加齢による体力低下と椎間板ヘルニアで休職することになった。
- 幼少期より原因不明の頭痛に悩まされていた。適宜仕事を中断して薬を服用していた。同僚からは、機嫌が悪いと思われていた。休息時間の確保等の業務上の配慮に繋がった。
- 既往歴に「突発性難聴」があったのに、誰もそれを知らなかったので、騒音職場に配属され、同僚との意思疎通に支障があった。配置転換の必要があった。
いかがでしょうか。
皆様の会社の中にも、上記のように苦しんでいる社員がいるとして、ストレスチェックや健康診断等、既存のサーベイだけで、彼らをきちんと見つけることができると、確信できるでしょうか?
ちなみに、どのような不調がプレゼンティーイズムへの影響が大きいかという研究はいくつかありますが、弊社の調査では、「メンタル面の不調」⇒「睡眠不足」⇒「身体の動きや移動に関する支障」の順番で影響が大きかったです。
「健康経営を科学する!実践を成果につなげるためのエビデンス」の本の中でも、ストレスチェックの高ストレス群と、非高ストレス群の間で、健康問題に関連した損失額を比較した調査が掲載されていますが、「1人あたり、年間130万円以上の差がある」という結果でした。
プレゼンティーイズムや生産性というと「それが正確に測れるのか」「測って意味があるのか」などと、難しく考えがちな人が多いのですが「今、どこかが痛くてつらい人」「今、気持ちが苦しい人」「眠れていない人」などを見つけ、個別に介入して症状を改善することで、プレゼンティーイズムは確実に改善するのです。
冒頭に申し上げた「概念的に考えるのではなく、自社におけるプレゼンティーイズムとは何なのか、ということを具体的に検証していく」とは、
★自社において助けを必要としている人を適切な方法で抽出し、
★個別にケアするとともに、
★どうしてそれが起きたのかを検証し、
★組織的に職場環境を改善していくこと
です。
また、社員にそのような手をさしのべる企業に対し、社員のエンゲージメント(愛着心・忠誠心)が向上するのは自然なことでしょう。不調がなくなり仕事に集中できれば、仕事への満足度やワーク・エンゲージメントも上がるでしょう。
エンゲージメントという言葉は、組織活性化の重要なキーワードですが、最近では「個人と組織が対等の関係で、互いの成長に貢献し合う関係」のことを指すとされています。真の企業価値とは、企業と社員が互いの成長に貢献し合い、結果として社会に貢献している状態を指すのではないでしょうか。
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------------☆筆者プロフィール☆------------
桜又 彩子(さくらまた あやこ)
SOMPOヘルスサポート株式会社
シニアゼネラルコンサルタント
システム開発会社の人事部で7年間勤務の後、
2007年よりSOMPOヘルスサポートにてメンタルヘルスおよび健康経営の
コンサルティング業務、研修講師などに従事。
【保有資格】
特定社会保険労務士
キャリアコンサルタント
シニア産業カウンセラー
ポジティブ心理学プラクティショナー
健康管理士一般指導員 など