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【セミナー特集】藤野教授解説!健康経営の次の一手-プレゼンティーズム対策とWFun活用
目次
健康経営におけるプレゼンティーズム対策の真髄!WFunで「働く力」を測定し、本質的な企業価値向上へ
近年、企業の健康経営推進において「プレゼンティーズム(プレゼンティーイズム)」への関心が急速に高まっています。従業員の健康状態が企業の生産性に直結するという認識が広がる中、単に病気で欠勤しないこと(アブセンティーズム)だけでなく、出社していても健康問題が原因で業務効率が低下している状態(プレゼンティーズム)への対策が、企業経営の喫緊の課題となっています。
本コラムでは、産業医科大学の教授であり、プレゼンティーズム測定ツール「WFun」を開発された医師でもある、藤野善久氏が登壇した『健康経営の次の一手-プレゼンティーズム対策とWFun活用』セミナーをもとに、健康経営におけるプレゼンティーズム対策の重要性と、WFunを活用した効果的な測定・対策・評価のポイントを紹介します。
※ 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
なぜ今、プレゼンティーズムが注目されるのか?WFunが持つ日本人向けのエビデンス
日本のプレゼンティーズムへの関心は、過去10年で飛躍的に高まりました。この背景には、経済産業省が推進する「健康経営」の普及があります。
健康経営ガイドブックでも、健康関連の最終目標指標として「プレゼンティーズム」が挙げられ、その測定方法としてWFunを含むツールが紹介されています。

藤野教授が開発した「WFun(ワークファンクショニングインペアメントスケール)」は、産業医科大学で開発された「労働機能障害調査票」の略称です。これは、「働く力」がどれくらいダメージを受けているかを測定するための指標で、以下のような特徴を持ちます。
- 簡単な7つの質問項目: 回答時間はわずか1~2分。
- 厳密な開発プロセス: 数学的理論に基づき、国際的なガイドラインに準拠して開発・検証されています。
日本人労働者に対する圧倒的なエビデンス: WFunは、この10年間で日本人労働者を対象とした学術的エビデンスを最も多く創出しており、その信頼性強みです。
健康経営ガイドブックでは、労働損失を確認する「WHO-HPQ」と、労働機能障害を確認する「WFun」が併記されています。
これは、生産性を「経営者が資源(設備、労働力、材料など)を使って生み出す付加価値」と捉えた時、WHO-HPQが「アウトプットとしての生産性のダメージ」を測るのに対し、WFunは「インプットとしての資源(働く力)のダメージ」を測る、という違いを意味します。どちらが良い悪いではなく、目的に応じた使い分けが推奨されます。

金銭換算を超えたWFunの真価:スクリーニングとターゲティングの優位性
健康経営の文脈では、プレゼンティーズムの「金銭換算」が求められることがありますが、WFunは単独では金銭換算をしないスタンスです。しかし、他の金銭換算可能なツールとの併用は可能であり、WFunが提供する真の価値は別のところにあります。
WFunが測定する「労働機能障害」とは、具体的には「体調が悪くて普段できている仕事ができなかった」「面倒な仕事をつい後回しにした」「業務時間を変更せざるを得なかった」といった、「お仕事で困っている場面」と強くリンクしています。
藤野教授は、WFunが「スクリーニング能力」に優れていることを強調します。ある事業所の検証では、ベテラン保健師の綿密なフルインタビューによる判断と、WFunの回答が非常に高い一致率を示しました。これは、WFunが短時間で精度の高いスクリーニングが可能であることを意味します。

さらに、WFunは「お仕事に困っている」という明確な基準で対象者を特定できるため、ターゲティングが非常に自然に行えます。
例えば、高ストレス者への面談で「高ストレス者だから面談しましょう」と誘っても応じにくいケースが多いのに対し、「お仕事で困っているようでしたので、お声がけしました」とWFunの結果を根拠に声をかけると、面談につながりやすいという実務的な効果も報告されています。
実際にWFunの高得点者を面談すると、健診では見つからない睡眠時無呼吸などの問題や、ストレスチェックで見逃された問題、あるいは職場環境は良好でも個人的な反復作業による痛みなど、多様な「困りごと」が明らかになることが研究で示されています。
WFunは病気や病名に依存せず、幅広い症状に対応して「困っている人」をピックアップできる強みがあるのです。

「測る」から「能力回復」へ:WFunを活用した具体的な対策
健康経営におけるプレゼンティーズムへの取り組みは、「測りましょう」から「測って、対策し、PDCAを回して能力回復を目指しましょう」へと要求が高まっています。WFunは、この「対策」と「評価」のフェーズで特にその有用性を発揮します。
支援の効果を測る指標には「反応性」(症状が改善すれば指標も改善する能力)が求められますが、藤野教授によれば、日本人労働者を対象にこの反応性を検証しているプレゼンティーズムツールは、現在のところWFunだけだとのことです。
対策の実施あたっては、以下の3つのチャンネルが考えられます。
1.臨床的介入:
- プレゼンティーズムの主要因とされる筋骨格系疾患、睡眠障害、うつ病に対しては、適切な治療が最も強力な対策となります。例えば、リウマチ治療薬や睡眠薬、抗うつ薬の服用により、WFunスコアが劇的に改善した事例が示されています。
- 治療開始後の継続支援も重要です。治療を中断すると労働機能障害が跳ね上がるデータもあり、職域での継続的なサポートが有効です。

2.職場調整:
- 産業保健の観点からも、業務調整、適正配置、ミスマッチ解消等は有用です。
- 適切な「休養」も重要で、2〜3週間の休養が労働機能障害の改善につながることが示されています。
従業員が会社からの配慮を実感する「POS(知覚された組織的支援)」も有効です。病気があっても、会社からの支援を感じる労働者は、労働機能障害が低く抑えられることが分かっています。
3,セルフケア:
- 認知行動療法やアプリ活用など、従業員自身のケアも効果的です。
- 「自己効力感」(痛みがあっても自分の生活や仕事ができるという感覚)を高めることで、重い痛みがあっても労働機能障害を低く抑えられることが研究で示されています。
- 運動や生活習慣の改善も、WFunスコアの改善に貢献します。

WFunが示す「負の生産性」と「人生への影響」
「プレゼンティーズムを改善すると生産性が向上する」という言葉はよく聞かれますが、学術的にはプレゼンティーズムと労働生産性を直接的に検証した研究は世界的に見ても少ないのが現状です。しかし、藤野教授は、WFunが「負の生産性」との強い関連性を示していると述べます。
WFunの研究では、以下のような「負の生産性」との関連が示されています。
- 退職率の増加: 労働機能障害が高いと退職率が最大4倍に高まる。
- 事故発生率の増加: 職業運転手において、労働機能障害が高い人は事故発生率が2倍に増加。
- ヒヤリハット経験の増加: 救命救急士において、労働機能障害が高いほどヒヤリハット経験数が多い。
- 転倒労災の増加: スーパーマーケット社員6700名の大規模追跡調査で、労働機能障害が高いほど転倒労災が増加。

これらのデータは、労働機能障害やプレゼンティーズムが、欠勤、退職、事故、労災、ヒューマンエラーといった企業の負の側面に強く影響していることを裏付けています。
さらに、プレゼンティーズムは労働者のQOLや人生そのものにも深刻な影響を与えます。
労働機能障害が高い人は、貧困経験のリスクが高まることや、離婚といった家庭生活への支障が生じることも研究で明らかになっています。健康問題が、働く人々の生活全般にわたる重要な課題であることを示唆しています。
まとめ:健康経営におけるWFun活用の有用性
健康経営におけるプレゼンティーズムへの要求は、「測る」段階から「支援を通じて労働者の能力回復を図る」段階へと変化しています。
WFunは、この新たな要求に応えるツールとして、以下の点で非常に有用です。
- ターゲティングの明確化: 「お仕事に困っている」という基準で支援対象者を特定しやすい。
- 施策効果の検証: 支援による個人の変化を正確に捉える「反応性」を持つ。
信頼性の高いビデンス: 日本人労働者向けに蓄積された豊富な学術的根拠があり、信頼性が高い。

産業医科大学の藤野教授は、「プレゼンティーズムは労働者の生産性だけでなく、人生においても重要なこと」だと結びます。
WFunを活用し、従業員の「働く力」を適切に測定し、きめ細やかな対策を講じることは、健康経営を推進し、本質的な企業価値向上を目指す上で不可欠な要素となるでしょう。
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