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【セミナー特集】令和7年度健康経営度調査票を読み解く! ~調査票対策の重要ポイントを徹底解説~

令和7年度健康経営度調査票を読み解く! ~調査票対策の重要ポイントを徹底解説~

2025825日から、『令和7年度健康経営度調査票を読み解く! ~調査票対策の重要ポイントを徹底解説』と題して、健康経営の第一線で多くの企業を支援してきた講師・櫻又によるWEBセミナーが開催されました。

そのセミナーより、最新版である令和7年度の健康経営度調査票における特に重要な改定ポイントと、企業が今すぐ取り組むべき対応策を5つの視点から抜粋し、解説します。

経営戦略との連動を強化する「KGI(重要目標達成指標)」の設定が最重要

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令和7年度調査票で最も注目すべきは、冒頭に「健康経営の推進方針」「目標」「目標達成状況を確認する指標(KGI)」の明確な設定が求められるようになったことです。これは、健康経営が単なる福利厚生ではなく、企業の経営戦略と一体となって推進されるべきという経済産業省の強いメッセージです。

【改定ポイント】

  • KGIKey Goal Indicator)の明示: これまではKPI(重要業績評価指標)が重視されましたが、今回から「達成したい目標」を明確にするKGIの設定が強く求められます。健康経営が最終的に何を実現したいのか、そのゴールを企業自身が定義し、具体的な道筋を示すことが期待されています。
  • 改訂版健康経営ガイドブックとの連携: 本年3月改訂の健康経営ガイドブックの戦略マップと連動し、「健康課題の明確化」と「KGI」が相互に繋がる構成です。自社の健康課題を踏まえ、その解決が企業全体の目標達成(KGI)にいかに貢献するかを描くことが求められます。

【企業が今すぐ取り組むべき対応策】 KGI設定のヒントとして、櫻又は以下の3つの切り口を挙げます。

  1. 「社長が最も気にしている指標は何か?」: 経営層が何を重要視しているか、経営課題と健康経営を結びつける視点です。経営層との対話を通じて、自社にとって最も重要なKGIを見出すことが求められます。
  2. 「自社の本業にとって最も解決すべき重要な健康課題は何か?」: 事業特性や従業員の状況に応じた健康課題を深く掘り下げ、その解決が本業にいかに貢献するかを具体的に言語化します。
  3. 35年の中長期スパンで目標達成が具体的にイメージできるか?」: KGIは具体的な成果がイメージできるものであるべきです。例えば、「特定の健康課題に起因する労働機能障害を測定し、〇年後に〇%改善する」といった具体性を持たせることが重要です。

これは「百社あれば百通りの健康経営があるはず」という事務局のメッセージでもあります。アブセンティーズム、プレゼンティーズム、ワークエンゲージメントといった一般的な指標に加え、自社にとって固有かつ本質的な企業価値向上に貢献するKGIを、経営層と共に深く議論し、設定することが求められます。

「健康風土・文化の醸成」状況の把握が新たに問われる

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令和7年度調査票では、Q 72として「企業の健康風土・文化」に関する設問が新設されました。これは、健康経営が一時的な取り組みではなく、企業文化として根付いているかを測る重要な指標です。

【改定ポイント】

  • 継続的な実践の土台健康風土とは、健康に関する共通の考え方や行動様式を含む、企業独自の環境を指します。継続的な健康経営により育まれるこの風土は、施策への参加率や効果を高める基盤となるため、その醸成状況の把握が求められます。
  • POS(知覚化された組織的支援)とPSS(知覚化された上司の支援)具体的な測定指標として例示されています。これは、組織が従業員の貢献を評価し、ウェルビーイングに配慮しているかを「従業員側がどう感じているか」を問うものです。会社側が施策を行っていても、従業員が支援を感じなければ意味がないという視点が強調されています。

【企業が今すぐ取り組むべき対応策】

  • 従業員エンゲージメント調査等の活用ストレスチェックの結果(上司・同僚の支援度合い)はもちろん、POSPSS、あるいは従業員エンゲージメント調査を通じて、従業員が「会社から大切にされている」「支援されている」と感じているかを定量的に把握することが重要です。
  • 「誠実さ」を伝えるコミュニケーション組織が従業員に提供する支援や投資が、「社員を本当に大切にしたい」という誠実な想いから行われていることを、丁寧かつ継続的に伝える努力が求められます。

経営トップによる「トップダウン推進」がより強く求められる

トップダウン.png健康経営推進の要諦として、経営層のコミットメントが不可欠であることはこれまでも言われてきましたが、令和7年度調査票ではその重要性がさらに強調されています。

【改定ポイント】

  • 経営層による発信の強化: Q17では経営トップ自らが従業員に、Q18では社外に対しても、健康経営の方針やKGIなどを発信しているかが問われます。
  • 会議体での議論とレビュー: Q23では設定したKGIや方針について、Q 73ではKGIの検証結果や改善案の決定が、どのレベルで行われているかが問われます。これにより、健康経営が経営会議レベルで定期的に議論され、意思決定が行われているかが確認されます。

【企業が今すぐ取り組むべき対応策】

  • 経営層への働きかけ: 健康経営推進担当者は、「調査票で求められているため」という理由付けをもって、経営層に対し、健康経営へのより積極的な関与(メッセージ発信、会議体での議論参加など)を促す機会と捉えるべきです。
  • 「トップダウンでなければ限界がある」という認識の共有: ボトムアップだけでは限界がある健康経営を、経営層が旗振り役となり、全社的な推進力とするための仕組みづくりと実行が求められています。

「普及の役割」がグループ会社・サプライチェーンまで拡大

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健康経営の波及効果を広げる「普及の役割」において、その範囲と質がこれまで以上に問われるようになりました。

【改定ポイント】

  • グループ会社への展開(新設Q20国内外を問わず、グループ会社全体で健康経営を進めているかが新たに問われます。
  • サプライチェーン・取引先への普及(Q21従来のサプライチェーンや取引先への普及に加え、これがグループ会社への普及と「AND条件」で評価されるようになり、両面での積極的な取り組みが必須です。
  • 「資料提供だけでは不十分」: Q21では、単に資料を提供するだけでなく、自社の成功事例やノウハウを「教える場を定期的に持つ」など、より実践的かつ積極的な支援が求められています。

【企業が今すぐ取り組むべき対応策】

  • グループ連携の強化各グループ会社や関連会社との連携体制を構築し、健康経営に関する情報共有、ノウハウ提供、共同施策の実施などを進める必要があります。
  • サプライチェーンへの積極的働きかけ取引先企業に対し、健康経営の重要性を啓発し、具体的な情報提供や実践支援を行うことで、サプライチェーン全体の健康レベル向上に貢献する役割が期待されます。

    「労働力確保」への貢献が健康経営の「土台作り」として重要視される

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    経済産業省が健康経営を推進する大命題の一つは、常に「労働力の確保」であり続けています。令和7年度調査票では、この目的達成に資する項目が「土台作り」という基礎カテゴリーに位置づけられ、その重要性が再認識されました。

    【改定ポイント】

    • 新カテゴリー「性差・年齢に配慮した職場づくり」これまで個別施策の一つだった「女性の健康保持」や「高年齢従業員の健康維持・体力状況」が、独立した新カテゴリーとして設定されました。
    • 「育児・介護」「疾病との両立支援」も土台作りの一部に育児や介護、がん等の疾病を抱える従業員への両立支援も、健康経営実践の「土台作り」カテゴリーに組み込まれ、その重要性が強調されています。
    • 「個別施策」から「必須の土台」へ櫻又は、これらがこれまでのような「自社の健康課題に応じて実施する個別施策」ではなく、「基本的には全ての企業が取り組むべき土台・ベース」として位置づけられたと分析します。これは、多様な従業員が長く健康に働き続けられる環境を整備することが、企業にとって不可欠な経営課題であるというメッセージです。

    【企業が今すぐ取り組むべき対応策】

    • ダイバーシティ&インクルージョンの視点性別、年齢、ライフステージに関わらず、全ての従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、制度設計や職場環境整備を進める必要があります。
    • きめ細やかな両立支援育児、介護、疾病治療と仕事の両立をサポートする制度の周知徹底と利用促進、さらには個別の相談体制の強化が求められます。

    まとめ:本質的な企業価値向上を目指す健康経営へ

    まとめ.png令和7年度健康経営度調査票の改定は、健康経営が単なる福利厚生に留まらず、企業の持続的な成長と企業価値向上に直結する経営戦略そのものであるという方向性を明確に示しています。

    特に重要なポイントは以下の5点です。 

    • KGIの設定: 成果を意識した経営戦略との連動
    • 健康風土・文化の醸成: 従業員が実感する組織的支援の向上
    • 経営トップによるトップダウン推進: 経営層のコミットメントと主体性
    • 普及の役割の拡大: グループ・サプライチェーン全体への健康経営の波及
    • 労働力確保への貢献: 多様な従業員が働き続けられる土台作り

    10月の申請に向けて、調査票の作成や社内調整は多大な労力を要することと存じます。今回の改定を機に、自社の健康経営が形だけのものではなく、真に企業を成長させるエンジンとなるよう、ぜひ本質的な議論と実践を進めてください。

    【セミナー配布資料】

    本コラムでご紹介したセミナーで使用した配布資料をご用意しております。「令和7年度・健康経営度調査票」まとめ記事サムネイル.jpg

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    「令和7年度健康経営調査票を読み解く!
    ~調査票対策の重要ポイントを徹底解説~」