お客さまの声 日本精工株式会社

お客さまプロフィール

日本精工株式会社
福島工場 総務労働課 総務労働課長:小澤 典文様
総務労働課 看護師:菊地 静江様

1916年に日本で最初に軸受(ベアリング)を世に送り出して以来、日本における軸受のパイオニアとして、さまざまな軸受を開発・供給し、産業の発展と機械の進歩に大きく貢献。現在は、軸受の分野で日本第一位、世界でも有数の地位を誇る企業。2013年より当社の産業保健、健康経営支援等の各種サービスをご利用。

パートナー産業医プロフィール

金澤 英紀先生

  • 医学博士、産業医、労働衛生コンサルタント、国際山岳医、日本医学放射線学会診断専門医、産業保健法務主任者、アンガーマネジメントファシリテータ
  • 旭川医科大学医学部医学科卒業
  • 自治医科大学附属病院での臨床研修後、同病院に勤務。その後大手企業での産業保健活動を経て独立。2019年よりメドリッヒコンサルティングオフィスの代表として産業保健のコンサルティングを展開

同社の取り組む産業保健活動と
今後の展望について伺いました

インタビュアー:
SOMPOヘルスサポート シニアコンサルタント

新しい産業医の先生をお迎えしようと思ったきっかけやその時抱えていた課題をお聞かせください。

小澤様金澤先生が来られる前までは地域の大きな病院の、臨床の先生でお願いしていましたが、患者さまをお持ちなのでとても忙しく、なかなか来ていただけませんでした。またその先生が体調を崩されたという事もありまして、御社にご相談することになりました。

菊地様は、医療職の立場として当時どのようなところを課題に感じていましたか?

菊地様まず一番は、安全衛生委員会への産業医の参加がずっとできていなかったということです。それと工場の巡視も満足に出来ていませんでした。最低限のことすら満たされていなかったのでリスクを感じていました。

コンプライアンス上のリスクを感じていたのが一番の課題ということだったのですね。先生は、日本精工様の訪問を開始した当時の印象や課題感についてはどんな形で受け止めていましたか。

金澤先生そうですね、今、お話にもあったように、地域の先生方が産業医をやっているケースはとても多く、その場合、産業保健業務に関して専門性やそもそも時間がないという問題がありますね。課題については、正直色々あると思いますが、全てをいきなり解決はできないので、優先順位をどうつけてやっていくかが重要だと思っています。突発的に起きる従業員の対応も発生しますからね。そのためどこがどう問題なのか、何が課題なのかをまず掴むところから始めて行きました。そして、これは今も継続している取り組みですね。

開始当初、菊地様が「これでやっと産業保健活動がしっかり進められる」と仰っていたのがすごく印象に残っています。色々な課題がある中で、優先的にまず取り組まれたのはどのような事でしょうか。

小澤様まず先生には、安全衛生委員会に出ていただいて、率直な意見を発言していただいたことと、職場巡視の結果を翌月に共有していただき、職場環境の改善を進めることでした。これまでは、当たり前のことがしっかりとできていませんでしたから。

先生が来られて、一番変わったなというのは具体的にどのようなところですか?

菊地様私が取り組んでいる後ろ盾として、先生がついてくれていると思えることが大きいです。私がやっていること、言っていることは間違っていないよって。先生もいつも仰いますが、「私たちにできることはここまでだよ、あと重要なのは従業員が自分で考えることだよ」って。これは代々工場長も仰っていることで、従業員は会社から支援を受けるだけではなく、自分の安全と健康は自分で守るという意識が大切です。それがすとんと落ちて、とても安心しました。それから、金澤先生はとにかく反応が早いです。訪問時以外にも相談させていただくことがあるのですが、アドバイスがパーンと返って来ます。ちょっと困ることは、うちの課長が頼りすぎるところでしょうか。

現場を先生が回っているという安心感は、従業員の方々にとっては大きいですよね。先生が定期的に工場に足を運んで下さって、その先生が健診結果等について健康指導してくれる、そういう繋がりがあると、ちゃんとアドバイスを聞こうかなという気持ちにもなりますよね。先生は、本当に頼りにされていますがいかがですか。

金澤先生安全衛生委員会も工場巡視もそうですが、まずは法令順守からでした。特に製造業なので、工場巡視はとても重視しています。安全の基本は現場を見ないと始まらない。社員に対しても産業医がちゃんと職場を回っているというアピールにもなりますから。その次に取り組んだのは、健康診断の結果のチェックでした。地域柄もあって、疾病を持っている方が多く、事後フォローも行うようにして来ました。ただ、全般的に言えることですが、厳密にやり過ぎるのではなく、うまく塩梅を取りながら調整することが大切だと思っています。産業医は、基本的に中立の立場なので、従業員側、会社側、どちらか一方に偏ってはなりません。時に判断が難しい時もありますが、先ほど菊池さんからもコメントいただいたとおり、自分ができるところはここまで、あとは会社の人事労務が担当すること、といった線引きは意識的に行っています。もちろん本人の健康問題においては、その方の出勤や業務に影響している問題の解決を当然お手伝いします。それとさっきお話のあった通りスピードは重視しています。私のところで何かストップしてしまったら、従業員ご本人にも会社にとってもなんのメリットもないですから。例えば、休職者の復職においては、復職日が延びたり、有給休暇が無駄に使われたり、傷病休暇にしても、結局、傷病手当金が出る期間が延びてしまったりとデメリットばかりです。どのように対応するは、産業医それぞれ考え方が違いますが、私はスピードを大切にします。

レスポンスのスピードが重要ということでしたが、特にメンタル不調等、復職のタイミングを考えると、タイムリーに返していくことが重要なのですね。

金澤先生そうですね。復職に関しては、産業医だけでは情報が掴めないので、主治医とこまめに連絡を取るようにしています。私が作成した診療情報提供書を菊地さんにお願いして送ってもらったり、タイミング的に私から送った方が早い時は直接送ったり、そのように対応しています。また、情報が不足している場合は主治医に積極的に聞く必要があります。復職に関しては、情報がとても重要ですから。主治医と連携する際は会社側の状況もお伝えしながら、復職が成功するように進めています。

先生が来られて特に進んだな、助かったなと感じている点はどのようなところですか?

小澤様一番進んだことは、第三次被害、たばこの問題です。当社では、構内完全禁煙化を進める方針で、本来は令和3年4月から完全禁煙化する予定でした。しかし、先生から「たばこを吸う者、吸わない者、双方に理解を示した上でやるべきで、第三次被害を防止することをゴールに設定して、ソフトランディングした方がいいですよ」とアドバイスをいただきました。更には動画まで作っていただいて、その動画を本社にも提供しながら、今、喫煙場の縮小と喫煙時間の縮小ということで順調に進めることが出来ています。これは本当に助かりました。おそらく工場の中では一番取り組みが進んでいると思います。

菊地様はいかがですか。

菊地様先生が来られて衛生教育活動がとても進みました。コロナ禍の折、外部から講師を呼ぶことも出来ず、また私達スタッフの月1回の本社研修もここ2、3年中止になっている中で、先生を頼りさせていただいています。喫煙のこともそうですが、その他のテーマでもお願いしています。特に当社は高血圧疾患が多く、全国で東北六県が1~6位、そして福島県は3位と塩分摂取量がとても多い。そこで先生に、社員を集めての教育は難しいけれど、動画であればということで作成いただいて、それを部署で視聴するようにしました。その次はAEDの実地訓練もしていただきました。それが本当に有難いと思っています。

金澤先生喫煙対策は、結構難しくて、産業医の中でもどこまでやるべきかよく話題になります。喫煙者・禁煙者それぞれの言い分を聞いて、慎重に進めて行くことが望ましく、いきなり全面禁煙にしてもうまく行かない。産業医としては、どうすれば社員の皆さんが気持ちよく仕事できるかという視点で考えます。そこで今回は、第三次予防という形で動画を作成し、提供しました。うまい落しどころを見付ける、産業医は調整力だと思っています。

「産業医は調整力」名言ですね。まさにそうですね。

金澤先生血圧に関しても、味噌汁を減塩にして、他の食事も塩分を無くせば良いのかもしれませんが、本人たちの不満やストレスが溜まってしまっては意味がない。そこで、現実はこうだよ、こんなリスクがあるよ、と今回は動画を使ってお伝えしました。製造業の方達向けに、例えば血圧180は噴き出した血液が電車の高さくらいになる絵を見せるなど、リスクを実感してもらえるような工夫をしました。会社としては、注意啓蒙をした上で、あとはご本人達が決めることだと思っています。

最後になりますが、今後の目標をお聞かせください。

小澤様そうですね、今やっていただいていますが、ストレスチェック後の対策です。高ストレス者の医師面接指導を実施していますが、若干去年より割合が増えてしまって。

菊地様2%増えて13%くらいでした。はっきりとした原因は分析が出来ていませんが、割合に反して、面談希望者の人数は減っています。去年は9人くらいでしたが、今年は5人という結果でした。何もリアクションがない人もいて、それがちょっと心配です。でも、先生のご指導の通り、返事をただ待つのではなく、会社側の能動的なアクションが重要だと思いますので、対象者の方にお手紙を出してご本人の意志を確認するようにしています。だけど、まだ何人かはお返事すらなく、やはり心配ですが。

小澤様半分弱、返事が来なかったと思います。

菊地様健康診断の事後措置、要受診や要精密検査の受診勧奨については、対象者の上長から声をかけてもらうこともお願いできますが、ストレスチェックの結果はそうはいかないので難しい面を感じています。

お返事のない方々にどうアプローチして行くか、このあたりが今後注力したいポイントになるのですね。先生は、今後目標にしたら良いと感じていることはございますか。

金澤先生そうですね、まず1年目でやって来たことは、もう起きている事への対処、具体的には高ストレスの方の個人に対する面接指導です。それだけではなく、今後は高ストレスにならないような職場づくり、いわゆる一次予防に取り組んで行ったほうが良いと思います。高ストレスの方への対処や職場環境の改善など、管理職の方達への教育、いわゆるラインケア教育ができるようになると良いと思っています。新型コロナの影響も少し落ち着いてきているので、オンラインではなくてオフラインでも、教育を実施するといいと思います。短時間でもいいので、管理職の方が部下の方の不調に早期に気付く方法や、日本人が苦手と言われるアサーティブコミュニケーション等のスキルを向上するための研修を実施することが効果的だと思います。少しずつですが、実際に研修を実施して手応えを感じています。その他、アンガーマネージメント等もやって行きたいと思っています。次に高齢者の方達の健康管理です。これについては、会社側の方針にもよりますが、その方たちの疾病性をどう防いでいくか、或いは配置転換も含め、会社側もどのように安全配慮して行くのか。今は二次三次予防を実施するに留まっていますが、将来的には一次予防の取組みを進められると良いのではないかと考えています。それから製造業で今後更に注意が必要なのは、有害業務についてです。現状こちらの工場では騒音対策の強化が必要だと思っていますが、ご存じの通り厚生労働省の方針で5年後を目処に化学物質の自律管理が始まる予定です。企業側のリスク管理が益々必要になります。産業医としては、専門的知識を持って企業側にアドバイスする重要性を感じています。

製造業の特徴を押さえた活動が必要になってくるのですね。

金澤先生そうですね。やはり製造業の産業医は、そこに強くないとやっていけないと思っています。ですので、最初にもお話した通り、私は職場巡視をとても大切にしています。どのような環境で、誰が、どのように、何を作っているのか、時には製品に触れたりしながら、一通り理解するように努めています。

菊地様そう、そう、そう。立ち止まって、先生がこれは何ですか?ここはどうなっていますか?という感じでどんどん攻めていきますね。

金澤先生そうですね。でも産業医の巡視は気を付けないと、批判ばかりになってしまいます。そうすると職場の方達のやる気を奪ってしまいますから。ですので、私は必ず良いところはきちんと褒めることを忘れないようにしています。そのうえで、明らかに命の危険性がある場合は強く指摘し、そうでなければ状況に応じた改善を指導するようにしています。

菊地様先生の巡視の仕方、質問の仕方を聞いていると、ここで事故が起きたら重大事故になるという考えが根底にあるのがすごく伝わってきます。現場の方達にもそれが伝わっていて、だからきちんと耳を傾けてくれていると思います。

金澤先生想像力が重要だと思います。そこに、リスクとハザードがどれだけあるのかをイメージする。適宜短いリスクアセスメントをやっているような感じですね。

菊地様工場の方たちは毎日そこにいるから当たり前の景色になっていてリスクの観点で見ることは難しいですから。職場巡視は本当に大切で、それが初めの一歩と言っても過言ではないと思っています。

ありがとうございました。最後に何か皆さまから一言ございますか?

菊地様金澤先生をご紹介下さってありがとうございました。

小澤様先生には本当に頭上がらないほど感謝しています。今後もよろしくお願いします。

金澤先生自分1人では仕事は出来ません。スタッフの方達とコミュニケーション良く、活動して行きたいと思っていますのでこちらこそよろしくお願いします。

みなさま本日はお忙しい中ありがとうございました。

パートナー産業医の声